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「“村上春樹”なんてものはスパゲッティをゆでる間の時間つぶしにでも片手で読むもんさ。」

先週の3連休辺りから集中的に村上春樹の本を読んだ。もちろん、特に深い意味はない。
なんとなくもう一度『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』が読みたくなり、『風の歌を聴け』『1973年のピンボール』『海辺のカフカ』、他にもエッセイを数冊読んだ。率直に言うと、ハマっている。

世間ではノーベル文学賞を受賞するのでは、という声もあるくらいの作家だ。『1Q84』は文字通り、社会現象を起こした。しかしながら、彼の魅力は何か、と訊かれるとなかなか難しい。

彼の本の登場人物たちは大抵何かにうんざりしている。特に社会を恨んでいるわけでもなく、彼らは年齢を感じさせないし、血が通っていることさえ感じさせない。無機質に近い。どうも登場人物が魅力に欠ける。ストーリーは猥雑で乱暴、そしてセクシャルな話が多い。例えば『風の歌を聴け』は、ハッキリ言ってよく分からない。物語に起伏があるわけでもなく、文章に繋がりがあるのかさえよく分からない。ほどよく小難しいことが書いてある。読み終わると虚脱感、喪失感に襲われる。

◆ 現実感、状況と主人公との力関係



まず第一に、彼の文章には現実感がない。ない、というのは言い過ぎだけど、何かが欠けている。「現実が破綻している」と表現してもいい。だから文章全体が現実感を喪失したまま宙に漂っている。国も信条もあまり意味をなさない。もしかしたら日本で起こっていることかもしれないし(もちろんハッキリ日本が舞台のものもある)、または別の国なのかもしれない。

第二に、登場人物の無力さ。彼らは不条理に放り込まれるけど、特にそこから何かを学ぶわけでもないし、大きく成長するわけでもない。問題を解決するわけでもない。ただ時間が流れていく。だらしない小説だと思う。『風の歌を聴け』や『海辺のカフカ』なんかは、金持ち息子の不幸ごっこに読めないこともない。

まだ氏の著作を数冊しか読んでいない人間が書くのもどうかと思うけど、この二点は大きな特徴であり、魅力だと思う。そして、それはカフカ的な表現でもある。氏は『海辺のカフカ』中で夏目漱石の『坑夫』という作品の世界観をこう書いている。

 「でも主人公がそういった体験からなにか教訓を得たとか、そこで生き方が変わったとか、人生について深く考えたとか、社会のありかたに疑問をもったとか、そういうことはとくに書かれていない。彼が人間として成長したという手ごたえみたいなのもあまりありません。本を読み終わってなんだか不思議な気持ちがしました。この小説はいったいなにを言いたいんだろうって。でもなんていうか、そういう『なにを言いたいのか分からない』という部分が不思議に心に残るんだ。」 (P221)


これって凄くカフカ的で村上的だと感じた。主人公が状況に対して能動的に振る舞えない、もしくは、主人公が何かを行動したところで事態の解決にならない、という状況と主人公の力関係は全く同じだと言える気がする。そして、あのなんとも言えない読後感。

もちろん、僕はカフカの『城』を斜め読みした程度だけど、カフカも文字は文字として現実との対応を無視しているというか、それによって場面に思いがけない要素が投げ込まれたり、論理が果てしなく引き延ばされる。読者は『城』とは何か、この設定は何を意味しているのか、と考えてしまう。

◆ 何か、とは何か


第三に、メタレベルの有無がある。ナカタさんの口から出てきた“白いもの”は一体何なのか。ナカタさんと田中カフカにとって“血”とは何を意味するのか、“城”は何のことか。つまり、何か、とは何か、という問題。多くの人はこれに興味があり、村上信者はこの“何か”を研究し、悦に浸っている。でも僕にとっては、何か、とは何か、なんてどうでもいいことである。それは何かではあるが、何かではない。

結局、誰かが解釈して何らかの形に収まってしまう“何か”なんて、“それだけのもの”だ。その解釈が“何か”に見合わず、それゆえ次々と別の解釈が生まれ、解釈してもしつくせないために全体の展望が得られないものこそが“何か”ということで、それが何なのかを知る能力なんて誰にも与えられていない。だから僕にとって村上作品にはメタレベルなんて存在しない。ただ作品を楽しむ、それだけだ。

村上春樹だからといって肩に力を入れて読むと、確実に肩すかしを喰らう。彼は様々な社会問題に解答を用意しているわけでもないし、痛烈な批判をしたいわけでもない。僕はそういうことを深読みして「分かったつもりになっている」人があまり好きではないだけだ。登場する不思議な人間と不思議な物語、そして素敵な音楽たちに耳を傾けながら、力を入れずに村上春樹を楽しもう。


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