【ネタバレ】 『チャイルド44』 トム・ロブ・スミス 著

2009.06.19 [ Edit ]

チャイルド44 上巻 (新潮文庫)チャイルド44 上巻 (新潮文庫)
(2008/08/28)
トム・ロブ スミス

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あらすじ (Amazon.co.jp)
スターリン体制下のソ連。国家保安省の敏腕捜査官レオ・デミドフは、あるスパイ容疑者の拘束に成功する。だが、この機に乗じた狡猾な副官の計略にはまり、妻ともども片田舎の民警へと追放される。そこで発見された惨殺体の状況は、かつて彼が事故と遺族を説得した少年の遺体に酷似していた…。

最近、郵政関連の専門書ばっかり読んでいるので、なかなか小説に時間が割けないんだよなぁ・・・。そんな中、息抜きに読んだこの小説 『チャイルド44』 。結果久しぶりの一気読み小説になりました。最近読んだ中では非常に面白かった一冊です。

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舞台はスターリン体制下のソ連。その元で実際に起こった 「チカチーロ事件」 という連続殺人事件を元ネタに置いて書かれています。まず面白いのが、スターリニズムにあるソ連という特殊な環境。彼らが主張するには、窃盗・強盗・レイプという犯罪は資本主義だから起こるという理論になります。共産主義下では、そうした犯罪は起こらないと主張するのです。

子供たちはみな学校で、殺人も窃盗もレイプもすべて資本主義社会の病気だと教えられる。人はものを盗む必要もなければ、暴力的になる必要もない。なぜならみな平等だから。だから共産主義社会では警察は理論上必要でない。

これを前提とした社会構造が非常に重要になります。ですから、警察は事件を事件と認めなくなります。一度認めてしまえば、自身の国家構造が揺らいでしまうからです。

こうした背景の中、子どもを狙った連続殺人事件が発生してしまう。当然国家はコレを事件と認めませんから、犯人は野放しになってしまう。コイツを放っておくわけにはいけないので、主人公のレオが犯人探しを始めるというのが大枠のお話。ないものをある、と主張する彼は国家に対する反逆者とされてしまう。

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まず徹底したリアリズムのもと描かれており、ここまでのリアリズムは必要ないのではないかとその惨さの表現に嫌悪感すら覚えてしまう。当時の恐怖政治が克明に描かれていて、そのもとで疑心暗鬼する国民の様は悲惨だ。特に冒頭での描写は凄まじい・・・。

国家が自らの過ちをひとつでも認めたら、結局のところ、全部認めたことになる。
国家に後戻りはできない。

元々レオは国家側の人間であり、絵に描いたようなヒーローじゃないのも面白い。その彼が同僚 (ワシーリー) の計略にはめられて田舎に左遷されるんだけど、そこで国家保安省時代に見た事件と酷似した事件が発生する。だが殺人事件の存在しないのがソ連だから、これらはいずれも事故として扱われていた。レオは犯人を追うが、ワシーリーも国家側として反逆者であるレオを追う。

そこから追う側と追われる側の攻防が始まり、ハラハラドキドキ展開になるわけだけど、色々と難点もあった。まずあそこまでしてレオが犯人を追う義理がないこと。それに終盤は若干ご都合主義的な展開になってしまっていた。

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過去の出来事が繋がっていくというのは、伊坂さんみたいな構成だけど、本書は思想面だったり、情勢が非常によく書かれている。伊坂さんはドタバタ近未来ファンタジーといったところ。本筋の展開が始まるまで、基盤づくりに上巻の 8 割を使い果たすという徹底っぷりから、そこで萎えてしまう読者を生みそうだけど、そこからがかなり面白いです。土台がシッカリしてるから、あとはドンドン引き込まれていく。オススメ。

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