Book - 靴ひも

靴ひも

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5.6 このエントリーのはてなブックマーク数

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人間は性慾は別としても、どうしてこう朝から晩まで、人間に関心を払い続けるか呆れるばかりです。朝の新聞、隅から隅まで人間のことばかり、それからテレビ、次から次へと人間ばかり現れる。

たとえば、人間が人間に対する関心をたのしむ宴会というやつを覗いてみましょう。そこでは言葉が飛び交い、感情が交流し、みんな愉快で、みんな地球のはじまりからの旧友のような心地になり、すべてが融け合い、すべてが共有されているような気になっている。

彼等はみな、苦痛が決して伝播しないこと、しかも一人一人が同じ苦痛の『条件』を担っていることを知悉しているのです。人間の人間に対する関心は、いつもこのような形をとります。同じ存在の条件を担いながら、決して人類共有の苦痛とか、人類共有の胃袋とかいうものは存在しないという自信。『結局おれとおんなじじゃないか』と言いたいために、同時に、『よかれあしかれ、おれだけは違う』と言いたいために、人間は血眼になって人間を探すのです。存在の条件の同一性の確認と、同時に個体の感覚的実在の確認のために。

『美しい星』 三島由紀夫(1962)



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自分自身を理解し向上させることの重要性 - 『無趣味のすすめ』 村上龍 著 このエントリーのはてなブックマーク数

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20数年生きてきているが、自分という人間を分かっているようで分かっていない。
就職活動では「自己分析」という作業を行う。だが、そもそも自分自身を理解していない人間が「自己分析」なんて始めるものだから、結果として無いもの探しになり途方にくれる。

無趣味のすすめ 拡大決定版 (幻冬舎文庫)無趣味のすすめ 拡大決定版 (幻冬舎文庫)
(2011/04/12)
村上 龍

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村上龍の様々な主張には共通項があるように思える。
それは、常に自分という人間を理解することの重要性だ。自分は何を目標として生き、そのためにどんな優先順位を付けて物事に取り組むのか。自分はどの程度の能力で、会社からはどの程度評価されているのか。そして、そこから自分はどうやって自身を向上させるのか。その点について、いくつか引用しておく。

ワークライフバランス

「仕事と生活のバランス」どころか、仕事がなくなり、生活が破壊されるのではないだろうかという不安が日本中に広がりつつある。ワークライフバランスなどと口にする前に、自分にとって、より人間らしい生活、より良い生活とは具体的にどういうものなのか、必死で考えるほうが先決ではないだろうか。 (pp103)

教育の憂うつ

ゆとり教育と学歴重視教育のどちらがいいのかという議論には、わたしはほとんど意味がないと思う。問題はただ一つ、わたしたちは、子どもをどんな人材に育てたいのか、ということだろう。だがそんな議論は起こる気配がない。どんな人材が欲しいのかという問いは、どんな社会にしたいかという問いと同じだし、あなたはどんな生き方をしたいのかという問いとも重なる。 (pp156)

ビジネスと読書

要するに、わたしたちは必要な情報を得るために本を読むのだ。
だからビジネスシーンに限らず、学生でも小説家でも、どんな職業でも、読書するかしないかが問題ではなく、どんな情報を自分は必要としているのかを自分で把握できるかどうかが問題である。自分は今どんな情報を必要としているのか、それを正確に把握するのは簡単ではない。 (pp48)

スケジュール管理

年末には数千冊のスケジュール手帳が店頭に並ぶらしいが、スケジュールを管理する、という概念を一度放棄するといいのではないかと思う。やるべきことに優先順位をつける、という方法を勧めたい。仕事とプライベートにおけるその人の優先順位が、その人の人生なのだ。 (pp61)

仕事における有用な人脈

情報や知識や何らかの人間的魅力など、その人に何らかの有用性がなければ相手にしてもらえない。(中略)この人は有用だろうかと考えるのではなく、まずあなた自身が他人から有用だと思われる人材になるべきだろう。 (pp67)

ときに投資は希望を生むが…

貯蓄が提供するのは「安心」だが、投資はときに「希望」を生むことがある。(中略)だから、今と将来の価値をイメージして資源を投入するという行為は、自分の希望を育む芽に関与することにつながる。(中略)まず、時間という資源をどう使っているか、自分のことに思いを馳せるべきではないだろうか。 (pp88)


◇ ◇ ◇

マスメディアによって全国に情報が垂れ流されている現代において、「最先端波乗り競争」に興じている人は多い。否定はしないが、そういった生き方は疲れるのではないかと思う。
過剰な情報に惑わされず、では自分は一体どんな人間で、どう生きるのか、ということに目をむけることはこれからより一層重要になるだろうと感じる。

まだ見ぬ「世界の果て」に想いを馳せる - 『ペンギン・ハイウェイ』 森見登美彦 著 このエントリーのはてなブックマーク数

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幼い頃、「ナンバープレートが黒色の車を見たら、その日不幸なことが起こる。それを防ぐには黄色ナンバーを10台見ないといけない」という都市伝説をよく聞いた。
もちろん、今となってはそんなバカなことはあるはずもないことだが、子どもながらに真剣に信じていた。アオヤマ少年には、そういった子どもらしさがある。考えは非常に知的で論理的なのに、そういう可愛さをしっかりと描いているから、ああ、子どもだなぁと感じる。

ペンギン・ハイウェイペンギン・ハイウェイ
(2010/05/29)
森見 登美彦

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カンブリア紀の海の浅瀬のような水色をした青空が広がり、カラッとした風が吹き抜ける。
魔法瓶から冷たい麦茶を注いで飲み、額の汗を拭う。アオヤマ少年の生きる世界はいつか見た光景。

知ることには快楽だけでなく、痛みが伴う。アオヤマ少年が知ることの痛みを味わうように、読者もまた読み進めることの痛みを伴う。それでも君は毎日毎日新しいことを知っていくのだろう、少年よ。

他人に負けるのは恥ずかしいことではないが、昨日の自分に負けるのは恥ずかしいことだ。一日一日、ぼくは世界について学んで、昨日の自分よりえらくなる。 (pp5)


久しぶりの王道ボーイ・ミーツ・ガール小説。まさか登美彦氏の小説で読めるとは思わなかった。
この水路はどこまで続いているんだろう、最近そんなこと考えたこともなかった。
まだ見ぬ「世界の果て」に想いを馳せる。

池上彰さんに学ぶ、読みやすい文章を書くための六か条 - 『伝える力』- 池上彰 著 このエントリーのはてなブックマーク数

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衝撃を受けた。
何に衝撃を受けたかというと、本書の内容にというわけでもない。
池上彰さんの文章の「読みやすさ」にだ。これは「分かりやすさ」ではなく、あくまでも「読みやすさ」だということを強調しておく。読書スピードが遅く、一冊読み終わるのに一週間はかかる人間が、一時間半程度で読み終わってしまった。もちろん、これには本書の内容の面白さも関係しているだろうが、僕にはどうも池上さんの書く文章には「読みやすい文章」を書くための法則があるんじゃないかと思えた。


伝える力 (PHPビジネス新書)伝える力 (PHPビジネス新書)
(2007/04/19)
池上 彰

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本書で池上さんが達成しなければいけないミッションは何か。
それは「伝える力」を「伝える」ことにある。つまり、途中で読者に投げ出されてはミッションを達成できない。必ず最後まで「読ませなければならない」。となると、当然「分かりやすく」「読みやすい」文章を書かなければなりません。では一体どんなことに注意すれば良いのでしょうか。